907 :非通知さん@アプリ起動中:2008/07/09(水) 04:58:46 ID:bSahMKVsO
―始まりは癒えない毒に包まれて―
沢山の人々で賑わう港街。高僧に転生した者や、ギラついた瞳で矢を数える元スカウト。
姿は様々であるが、共通するのは赤いローブを身に纏っている事。女神テルミラの祝福の象徴だ。
ふと、自分も遥か昔に『転生』していた事を思い出す。
今でこそ、全身を包むミスリル製の鎧がやっと板についてきた私だが、初めは森羅万象を司る魔導の匠を目指していた――
港街の外に広がる草原は、既に怪物の楽園と化していて、駆け出しの旅人達が挙って退治に出掛けて行った。
私も、この四肢に眠るオウラを解き放ち、広がる世界をくまなく歩いて巡る夢を見た。
しかし乍ら、その夢はすぐに潰える事となる。
私には素質が無かった…
いくら鍛えても、憧れの『魔法』を覚える事は出来なかったのだ。
草原を闊歩するゴブリンには全く歯が立たず、軟体生物の毒素にあてられ続け…他の旅人と歩みを共にしたとて、厄介者である事は明白。
「悪いが抜けてくれないか?」
遂に、黒髪の戦士から戦力外の通告を言い渡された。
私の冒険は始まったばかりで儚く消えた。
悔しかった。守られるばかりで何も出来なかった自分の情けなさが歯痒い。
そうして私は、守られる側から守る側になることを決めた。
怪物の注意を引き、ひたすら叩き続ける日々が始まる。
かつて憧れた魔法使い達は、可愛らしいローブを身に纏い、後方から溢れんばかりの魔力を放ち怪物を翻弄してくれる。
正直言って羨ましい…
一方の私はといえば、増えるばかりの生傷に重々しい鎧の姿だ…可愛さの破片も見当たらない。
が、上手く怪物を退け続ければメンバーから感謝された。
ほんの少し前は御荷物だった自分が、今はパーティの生命線として前線に立っている…感謝までされる。
珍しいモンスターを難なく倒せる様になった頃、魔法使い達への嫉妬は消えていた。
拠点を山間の町に移した頃、共に旅をしてきた仲間達と、なかなか時間が合わなくなってしまった。
『彼等』に会ったのは、そんな時だった。
「何方か、ザインに棲む真紅のドレイク討伐を手伝ってくれませんか?」
…実に丁寧な言葉遣い。当たり前と言えばそれまでなのだが、当時は掛け声でメンバーを募る旅人が大多数で、私には声の主が新鮮に映ったのだ。
どうやらクレリックとメイジのコンビらしい。誰も名乗りをあげないのであれば…
「OK」
立ち上がり、声を掛けた。
突然現れた、いかつい女に驚いたのだろうか…?彼等はすぐには返事をくれなかった。
と、思いきやあれよあれよとパーティ結成。
歓喜の言葉まで拝聴出来た。
…必要とされている事に、嫌が応にもやる気が湧いてくる。
一路、ザインへ。
…いざ戦闘が始まると、彼等はまるで隙のない行動で回復、補助、そして魔法攻撃を繰り出すのだった。
波長が合う旅人なら、今まで沢山居た。しかし彼等は…根底から違う。
必死にドレイクの注意を引き付けてはいるが、所詮はまだまだ駆け出しのファイターである。
当時は屈指の強敵だった相手に、ミスが目立つ…
しかし彼等は「助かります」と、屈託の無い顔で言ってのける。
人柄も良く、実に無駄のない戦闘の運び…
まざまざと見せ付けられて、私は気付いた。
(成程…これが本当の固定パーティか…)
経験したことの無い楽しさ…
メイジを目指し、挫折した時の嫉妬などと同じでは無い。私は彼等が心底羨ましく、輝いて見えた。
(また、君達と組みたいよ…)
自分から強く思ったのは初めての事だった。
無論、口には出さない。出してなるものか。恥ずかしいじゃない。
だから…
「またね」
――ぼんやりと座り、回想に溺れていると、後ろから声をかけられた。
「御待たせしました!」
ハッと振り返ると、笑顔で此方を見つめる二人が居た。
「いよいよ…ですね」
そう、私は…これから三度目の『転生』をする。
いや、私達、か。
漆黒のローブを纏うメイジは落ち着かない仕草で私の周りを歩き回っている。
薄紫の軽鎧を身に付け、透き通る様な盾を携えたクレリックが私の隣に座る。
港街の軟風が、私達の髪を揺らす。
「行きましょうか、マナ区へ」
君達と出会えたから、この先どんな障害に阻まれても乗り越えて行ける自信がある。
挫折した私はもう居ない。
今ははっきりと口に出して言える。
君達は、私が護る。
五月某日
ラストスタンドでELEKTERAのターゲットを取ろうとした地雷ファイターの日記より抜粋
了
レス
912 :非通知さん@アプリ起動中:2008/07/09(水) 10:10:10 ID:A2wgkKkWO
>>910
泣いてしまったジャマイカ
まだまだ冒険は始まったばかり、此からも910の旅は続くよ!
913 :非通知さん@アプリ起動中:2008/07/09(水) 10:17:32 ID:nbb73xPFO
>>907-910
固定に対する愛を感じたよ、良いものを読ませてもらいました
GJ!!
914 :非通知さん@アプリ起動中:2008/07/09(水) 15:37:09 ID:MxwwdI2iO
>>910
良いフレンドがいて羨ましいGJ!
482 :非通知さん@アプリ起動中 :sage :2008/09/02(火) 16:07:13 ID:JKgnNcJOO
――ぼんやりと座り、回想に溺れていると、後ろから声をかけられた。
「御待たせしました!」
ハッと振り返ると、笑顔で此方を見つめる二人が居た。
「いよいよ…ですね」
そう、私は…これから三度目の『転生』をする。
いや、私達、か。
漆黒のローブを纏うメイジは落ち着かない仕草で私の周りを歩き回っている。
薄紫の軽鎧を身に付け、透き通る様な盾を携えたクレリックが私の隣に座る。
港街の軟風が、私達の髪を揺らす。
「行きましょうか、マナ区へ」
君達と出会えたから、この先どんな障害に阻まれても乗り越えて行ける自信がある。
挫折した私はもう居ない。
今ははっきりと口に出して言える。
君達は、私が護る。

時間が無かったので素材使いましたが…手を加えたので許して下さいorz
文章は前スレSSより、固定タンクが最後に書いたものを。
お疲れ様でした。
レス
483 :非通知さん@アプリ起動中 :sage :2008/09/02(火) 16:28:59 ID:wtJqKV8qO
>>482
なんだ神か
ワンダと巨像やりたくなってきたああ
85 :非通知さん@アプリ起動中 :sage :2008/09/03(水) 04:38:48 ID:lNNyMz9aO
>>482
これまた世界の広さが伝わるいい絵だ、つか綺麗なぁ
こんがり小麦色の肌したスカウトさんを描いた方ですか?
今回は後ろ向きだけどまたどこかでお顔を拝見したいところです。GJ!
